AV新法( AV出演被害防止・救済法)とは?事務所関係者が語る法律の内容と業界への影響
近年、日本のAV業界では、AV新法(通称: AV出演被害防止・救済法)の規制によって、業界にどのような影響が与えられるのか関心が集まっております。
新しい法改正によって、どのような影響があるのでしょうか?
プロダクション関係者が、この点について解説させていただきます。
▽この記事でわかること
AV新法( AV出演被害防止・救済法)とは?
まず、AV新法とは、「 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」というのが正式名称になります。
参考:e-gov 法令検索
2022年6月22日に公布され、2023年6月23日に施行されました。
AV新法の詳細と目的
では、この法律はどのような内容(規制)の法律なのでしょうか?
一言でまとめると「出演者であるAV女優さんが、プロダクションとの契約で被害を被らないように出演者の権利を保護するための」規制です。
そのために具体的に、次の2点をプロダクションやメーカー側に遵守させることで、女優さんの権利を保護します。
- 出演の同意なしに出演させないこと
- 出演作の利用を制限すること
出演の同意なしに出演させないこと
具体的には、仕事内容を十分に説明した上で、女優さんから明確な同意を得ることや、同意の契約書を結ぶことなどが求められます。
出演作の利用を制限すること
具体的には、公表から1年間は、契約のクーリングオフが認められたり、撮影から販売まで4ヵ月の期間を設けたり、出演者の同意なしに2次利用を禁止にするなどの内容になっております。
AV新法による規制の背景と、目的
では、AV新法は、どのような目的、背景で設立されたのでしょうか?
古くからAV業界では、旧態依然としており、出演者であるAV女優さん自身の意思に反する作品に出演させられたり、出演作を2次利用されるなど、権利がないがしろにされる問題がありました。
それ以外にも、悪質なプロダクション、メーカーによる、
- 女優さんへの暴言、暴行
- ギャラが支払われない
- プライバシーが侵害される
などの問題が取りざたされておりました。
こういった問題点を踏まえ、AV業界全体を健全化するためにも、出演者の意思や安全を尊重するために、この法律が施行されました。
AV新法によるAV業界への影響について
では、AV新法によってどのような影響があるのでしょうか?
プラスの面とマイナスの面の両方が予想されるので、両方に分けて説明したいと思います。
プラスの影響について①:女優さんの権利が保護される
まず、プラスの面については、AV女優になる女性が、より安全に安心してAVに出演できるということです。
プラスの影響について②:過激なコンテンツが淘汰される
次に、AVのユーザー様に、過激なコンテンツが制限されることで、健全なコンテンツだけが提供されるようになります。
マイナスの影響について①:業界への負担が増える
一方、マイナスの影響については、プロダクションやメーカーへの物理的な負担が増えることがあげられます。
出演までの期間が長くなることで、制作スケジュールが後ろ倒しになったり、キャンセルが容易になることで、途中でキャンセルされた場合に、面接や撮影などにかかった費用が、そのままプロダクションやメーカーが負担を被ることになります。
マイナスの影響について②:手取りが少なくなる
その結果、メーカーやプロダクションの利益が圧迫されるため、結果的に出演者の女優さんの出演料が減少することも懸念されております。
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